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夏奈子

私がこの世に生を受けて18年。

この街に生まれてもう18年が経った。

 

両親は私が10歳の頃に離婚した。

10歳までの記憶を時折思い出す。

 

それから3年後、私を引き取った母は、必死に水商売で生計を立ててくれていたけど、

子どもを持ちながら水商売を続ける罪悪感に呑まれて、一番街の端で非合法なギャンブルに手を出した。

 

…それから2年か3年も経った頃、母は自殺した。

貯蓄は底を尽きて、借金だけが残った。

母が残された私に迷惑をかけないようにと気遣って、生命保険に入っていたの。

それで借金は帳消しになったけど、でもそれだってゼロからのスタート。

 

16歳で若さ以外に何の取り柄も才能もない小娘が、日々生きていくためには、こうする以外に手段がなかったの。

 

 

…私は昼間の喧騒が嫌い。楽しくて輝いてたあの頃を思い出して、

今の生活がとっても惨めに感じるの。だから、大嫌い。

 

…でもね、お母さん、聴いて欲しいの。

私ね、好きな人ができたの。

 

私、あの人と居ると、すっごく幸せな気持ちになるの。

今まで私が一人でかろうじて稼いでた学費も、

彼が全部肩代わりしてくれるって。

 

…だから、私はもう寂しくないの。これから素敵な日々が始まると思うの。

お母さんに心配かけ無くて済むように、これから私幸せになるからね。

 

 

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